Obsidian と Joplin の選び方:Markdown ノートアプリ比較ガイド

Obsidian と Joplin を、オープンソース性、データ保存、同期コスト、プラグインエコシステム、Web クリップ、向いているユーザーの観点から比較し、自分に合う Markdown ノートアプリを選ぶためのガイドです。

Obsidian と Joplin はどちらも Markdown ノートツールですが、向いているユーザーはかなり違います。

簡単に言うと、Obsidian は深い知識管理、双方向リンクを使ったツェッテルカステン、そして高度なカスタマイズを好むユーザーに向いています。Joplin は、データプライバシーを重視し、全プラットフォーム同期が必要で、従来型のフォルダ分類や Web クリップを好む実用派のユーザーに向いています。

「第二の脳」を作りたい、長期的な研究ノートを書きたい、プラグインや知識グラフを試したいなら Obsidian を優先して見るとよいでしょう。より安全で自由な Evernote / Youdao Cloud Notes の代替を探しているなら、Joplin から見るのがおすすめです。

主な違い

比較項目 Obsidian Joplin
オープンソース性 クローズドソース。個人利用は無料、商用利用は有料 完全にオープンソース、AGPL-3.0 license
データ保存 ローカルの .md プレーンテキストファイル ローカルデータベースで管理し、ノート本文は Markdown
データの扱いやすさ ファイルが直接ローカルフォルダにあり、移行とバックアップが直感的 アプリまたはエクスポート機能で管理する必要があるが、暗号化と同期に対応
公式同期 Obsidian Sync、有料 Joplin Cloud、有料
無料同期 iCloud、Git、Jianguoyun、Syncthing など第三者の仕組みが必要 OneDrive、Dropbox、WebDAV、ファイルシステムなどの同期先を内蔵対応
主な強み 双方向リンク、知識グラフ、プラグインエコシステム、高いカスタマイズ性 Web クリップ、エンドツーエンド暗号化、クロスプラットフォーム同期、オープンソース
整理方式 関係ネットワーク、双方向リンク、タグ、フォルダ ノートブック、サブノートブック、ノート、タグ
始めやすさ 強力だが、使い込むほど複雑になりやすい 従来型のノートアプリに近く、始めやすい

データ管理とプライバシー

Obsidian の特徴は「ファイルがそのままデータ」であることです。ノートは普通の .md ファイルとしてローカルフォルダに直接保存されます。将来 Obsidian を使わなくなっても、任意のテキストエディタで開けます。

この方式は直感的で、オープンで、バックアップしやすく、Git 管理にも向いています。一方で、同期、添付ファイル管理、複数デバイス間の一貫性はユーザー側で計画する必要があります。

Joplin も Markdown 構文を使いますが、ノートはアプリのローカルデータベースで管理されます。強みはアプリとしての機能がよりまとまっていることです。ノート、添付ファイル、タグ、同期状態をアプリが一括して扱います。さらに Joplin はエンドツーエンド暗号化(E2EE)を標準でサポートしているため、第三者クラウドドライブで同期しても、クラウド事業者がノート内容を直接読むことは難しくなります。

「自分のノートはローカルファイルである」ことを重視するなら Obsidian が自然です。「同期、暗号化、添付ファイル管理をアプリに任せたい」なら Joplin のほうが楽です。

同期方法とコスト

Obsidian の公式同期サービスは Obsidian Sync で、体験は良いものの有料です。スマートフォン、タブレット、パソコンの間で無料同期したい場合は、iCloud、Git、Syncthing、Jianguoyun、その他 WebDAV などの第三者方式を自分で設定する必要があります。ファイル同期に慣れている人には問題ありませんが、初心者にはハードルがあります。

Joplin の同期はより内蔵機能寄りです。Joplin Cloud に加え、OneDrive、Dropbox、WebDAV、ファイルシステムなどの同期先もサポートしています。アカウントや接続先を設定すれば、複数デバイス間でノートを同期できます。

ニーズ 向いている選択
公式同期に課金して手軽に使いたい Obsidian Sync でも Joplin Cloud でもよい
第三者クラウドで無料同期したい Joplin のほうが直接的
Git / Syncthing / iCloud に慣れていて、調整を楽しめる Obsidian も使いやすい
同期時にエンドツーエンド暗号化を使いたい Joplin のほうが内蔵されている

プラグインエコシステムとカスタマイズ

Obsidian のプラグインエコシステムは、最大の強みの一つです。プラグインによって、タスクボード、フラッシュカード、カレンダー、マインドマップ、個人データベース、さらにはローカル知識システムに近いものへ変えられます。

双方向リンク、バックリンク、ローカルグラフ、Dataview のようなプラグインは、散らばったノートを徐々に知識ネットワークへ変えていきます。本の執筆、研究、知識カード、プロジェクト資料の蓄積には非常に魅力的です。

Joplin もプラグイン、テーマ、いくつかのリンク機能に対応していますが、エコシステムの豊富さや試行錯誤の余地は Obsidian ほどではありません。その代わり、より抑制的で、テーマ変更やプラグイン試用に多くの時間を使いすぎにくいという利点があります。

目標が「知識管理システムを深くカスタマイズする」ことなら Obsidian が強いです。「安定して記録し、同期し、検索する」ことが目的なら Joplin で十分です。

Web クリップ機能

Web クリップは Joplin の強みです。公式 Web Clipper があり、ブラウザから Web ページ、簡略化した記事本文、ページのスクリーンショット、リンクを保存できます。オフライン資料を集めたり、技術記事を保存したり、Web コンテンツを整理したりする人には実用的な機能です。

Obsidian の標準 Web クリップ機能は比較的弱く、通常は第三者のブラウザ拡張や別のワークフローに依存します。選択肢は多いものの、体験と安定性はプラグインや Web ページ構造に左右され、保存後に手作業で整形が必要になることもあります。

場面 向いている選択
Web 記事を頻繁に保存する Joplin
オフライン資料庫を作る Joplin
たまに Web リンクを保存するだけ どちらでもよい
保存後に深く書き直し、双方向リンクで整理する Obsidian

整理方式の違い

Obsidian はローカルフォルダを土台にした知識ネットワークに近いツールです。フォルダで整理することも、タグ、双方向リンク、バックリンク、グラフで知識を整理することもできます。非線形なノートや、テーマ同士の関係が複雑な知識ベースに向いています。

Joplin は従来型のノートソフトに近いです。ノートブック、サブノートブック、ノートという階層構造を採用し、タグにも対応しています。Evernote、Youdao Cloud Notes、OneNote のようなツールに慣れている人には、Joplin の整理方式のほうがなじみやすいでしょう。

好み おすすめ
フォルダ + 双方向リンク + グラフが好き Obsidian
ノートブック + サブノートブック + タグが好き Joplin
学術研究、執筆、ツェッテルカステン Obsidian
資料収集、プロジェクトノート、Web アーカイブ Joplin

Joplin の機能と実用上のポイント

Joplin が解決すること

多くのノートアプリは便利ですが、データが特定のアカウント、クラウドサービス、あるいは独自形式に閉じ込められやすいという問題があります。Joplin はよりオープンな考え方を採り、完全なデータをローカルに保持し、本文は Markdown で保存し、ユーザーが選んだ同期先を通じて複数デバイス間で同期します。

次のような用途に向いています。

  • ノートを Markdown として長期保存したい。
  • パソコンとスマートフォンの間でノートを同期したい。
  • Evernote から古いノートや添付ファイルを取り込みたい。
  • エンドツーエンド暗号化同期を使いたい。
  • プラグインやテーマでノートアプリを拡張したい。
  • Web ページの内容を素早く自分のノートライブラリへ保存したい。

主な機能

機能 説明
オープンソース リポジトリが公開され、長期的にメンテナンスされており、AGPL-3.0 license で提供
クロスプラットフォーム Windows、macOS、Linux、Android、iOS に対応
Markdown ノート本文は Markdown を使用し、閲覧、移行、長期保存がしやすい
オフラインファースト データは常にローカルに保存され、ネットワークがなくても閲覧・編集できる
同期 Joplin Cloud、Nextcloud、Dropbox、OneDrive など複数の同期先に対応
エンドツーエンド暗号化 同期時に E2EE を有効化でき、クラウド保存時のリスクを下げられる
インポート Evernote からのインポートと通常の Markdown ファイルのインポートに対応
拡張 プラグイン、テーマ、Web Clipper に対応

オフラインファーストとは

Joplin の公式 README では “offline first” が強調されています。これは、ノートがクラウドだけに存在するのではなく、ローカルのパソコンやスマートフォンに保存されるという意味です。ネットワークがなくても、既存のノートを開き、検索し、編集できます。

この設計はノートツールにとって重要です。ネットワークが不安定なとき、同期サービスが一時的に使えないとき、あるいはアカウントサービスに問題が起きたときでも、ローカルには完全なデータが残ります。同期は複数デバイスの状態を揃えるためのものであり、利用体験全体をクラウドに依存させるものではありません。

Markdown とインポート機能

Joplin はノートに Markdown を使うため、完全な独自形式よりも移行やバックアップがしやすくなります。通常の Markdown ファイルを直接インポートできるほか、Evernote からノートを取り込むこともできます。

Evernote からインポートする際、Joplin は書式付きコンテンツを変換し、画像や添付ファイルなどのリソースを保持しようとします。作成日時、更新日時、位置情報などのメタデータも可能な範囲で保持します。長年 Evernote に資料をためてきた人にとって、これは単に文字をコピーするより重要です。

ただし、アプリ間の移行で「ワンクリックで完全」と考えるのは危険です。複雑なレイアウト、表、添付ファイル、内部リンク、タグ構造は、少量のサンプルで確認してから全体を移行するのがおすすめです。

同期と暗号化

Joplin は複数の同期方式をサポートしています。代表的な選択肢は次の通りです。

同期先 向いている場面
Joplin Cloud 公式サービスで手軽に使いたい
Nextcloud 自前のクラウドやチーム環境がすでにある
Dropbox Dropbox を普段から使っている
OneDrive Microsoft エコシステムを利用している
ファイルシステム / WebDAV など 同期場所を自分で管理したい

同期はエンドツーエンド暗号化と組み合わせて使えます。有効化すると、ノート内容はクラウドへ同期される前に暗号化され、クラウドサービス側には主に暗号化済みデータが保存されます。これにより、第三者のクラウドストレージや同期サービスから内容が漏れるリスクを下げられます。

一方で、暗号化には管理コストもあります。パスワードや復旧情報を適切に保管しなければ、デバイスの変更や再インストール後に古いノートを復号できなくなる可能性があります。

Web Clipper とプラグイン

Joplin には、Chrome や Firefox などのブラウザから Web ページやスクリーンショットを保存するための Web Clipper も用意されています。資料収集、Web クリップ、研究ノート作成を行う人にとって実用的な入口です。

プラグインとテーマにより、Joplin は固定機能のノートソフトというより、拡張可能なプラットフォームに近くなっています。ユーザーは自分のワークフローに合わせて、編集、表示、検索、インポート、エクスポートなどの機能を拡張できます。

Obsidian との違い

Joplin と Obsidian は Markdown ユーザーの間でよく比較されますが、重視している部分は異なります。

観点 Joplin Obsidian
主な位置づけ 同期と暗号化を内蔵したオープンソースのノート・ToDo アプリ バックリンク、プラグイン、グラフを重視するローカル Markdown 知識ベース
データ整理 アプリがノートブック、タグ、添付ファイル、データベースインデックスを管理 フォルダと Markdown ファイルを中心に作業
同期 複数の同期先と E2EE を内蔵 公式同期は有料。第三者同期を自分で使うことも可能
向いている人 すぐ使えて、クロスデバイス同期とプライバシーもほしい人 ローカルファイル中心の知識ワークフローを深くカスタマイズしたい人

「オープンソース版 Evernote + Markdown + 暗号化同期」が欲しいなら、Joplin のほうが近いです。ローカル Markdown ファイルを中心に高度にカスタマイズした知識システムを作りたいなら、Obsidian のほうがなじみやすいかもしれません。

向いている人

Joplin は次のようなユーザーに向いています。

  • Evernote から移行したい人。
  • ノートを Markdown として保存したい人。
  • Windows、macOS、Linux、Android、iOS 間で同期したい人。
  • プライバシーを重視し、エンドツーエンド暗号化を使いたい人。
  • オープンソースで、セルフホスト可能で、長期的に移行しやすいノートアプリを望む人。
  • Web クリップと添付ファイル管理が必要な人。

ただし、極限までシンプルなメモだけが欲しい人には必ずしも向きません。Joplin は機能が多く、同期、暗号化、プラグイン、インポートを設定するには少し理解が必要です。

使い始めるときのすすめ

Joplin を試すなら、次の順番で始めると安全です。

  1. まずデスクトップ版でテスト用ノートブックを作る。
  2. 少量の Markdown または Evernote サンプルをインポートする。
  3. 画像、添付ファイル、タグ、作成日時、書式が正常か確認する。
  4. 次に Joplin Cloud、Nextcloud、Dropbox、OneDrive などの同期先を設定する。
  5. エンドツーエンド暗号化を有効にする場合は、すべてのデバイスで正常に同期・復号できることを確認する。
  6. 最後に完全なノートライブラリを移行する。

この手順なら、何年分ものノートを一度に取り込むより安定し、正式な移行前に書式や同期の問題を見つけやすくなります。

どちらを選ぶべきか

Obsidian を選ぶべき場合:

  • 長期研究、執筆、授業資料整理、個人知識ベースを作っている。
  • 双方向リンク、バックリンク、知識グラフを重視する。
  • インターフェース、ショートカット、プラグイン、ワークフローを高度にカスタマイズしたい。
  • 同期、プラグイン、ファイル構造の調整に時間を使ってもよい。
  • ノートをローカル Markdown ファイルとして直接存在させたい。

Joplin を選ぶべき場合:

  • オープンソースで、クロスプラットフォームで、同期できる従来型ノートアプリが欲しい。
  • エンドツーエンド暗号化とデータプライバシーを重視する。
  • Web クリップで記事を保存することが多い。
  • 基本同期に課金したくなく、複雑な同期方式も組みたくない。
  • ノートブック、サブノートブック、タグという従来型構造に慣れている。

まとめ

Obsidian と Joplin は、どちらが絶対に上という話ではなく、設計目標が違います。

Obsidian は、高度にカスタマイズできる Markdown 知識管理プラットフォームに近い存在です。システムを組み、双方向リンクを使い、プラグインを試したい人に向いています。上限は高いですが、「ノートを書くよりシステムを作るほうが楽しい」状態にもなりやすいです。

Joplin は、オープンソースで、同期でき、暗号化できる従来型ノートアプリに近い存在です。安定した記録、Web クリップ、複数デバイス同期、資料の長期保存を求める人に向いています。Obsidian ほど強力な双方向リンクエコシステムはありませんが、「インストールしたら真面目にノートを取り始められる」ツールに近いです。

一言で言えば、第二の脳を作りたいなら Obsidian、オープンソース版 Evernote が欲しいなら Joplin です。