Anthropic の現在の Claude モデルラインは、もはや「Haiku は速い、Sonnet はバランス型、Opus は最強」だけでは説明できない。2026 年 7 月時点で、主なモデルには Claude Fable 5、Claude Opus 4.8、Claude Sonnet 5、Claude Haiku 4.5、そして限定提供の Claude Mythos 5 がある。
素早く選ぶなら、まず次のように考えるとよい。日常開発と多くの Agent タスクは Sonnet 5、複雑な企業 Agent と高難度コーディングは Opus 4.8、最高能力が必要なら Fable 5、低レイテンシやコスト重視なら Haiku 4.5。Mythos 5 は一般向けではなく、承認された顧客向けだ。
現在の主要モデル
| モデル | API ID / alias | 位置づけ | コンテキスト | 最大出力 | レイテンシ傾向 | 標準価格 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| Claude Fable 5 | claude-fable-5 |
Anthropic の広く公開されたモデルの中で最高能力、長時間 Agent 向け | 1M tokens | 128k tokens | 遅め | 入力 $10 / MTok、出力 $50 / MTok |
| Claude Opus 4.8 | claude-opus-4-8 |
複雑な Agent コーディング、企業ワークフロー、ブラウザ/コンピュータ利用 | 1M tokens | 128k tokens | 中程度 | 入力 $5 / MTok、出力 $25 / MTok |
| Claude Sonnet 5 | claude-sonnet-5 |
速度、能力、価格のバランスが最もよく、デフォルト候補 | 1M tokens | 128k tokens | 速い | 2026-08-31 まで入力 $2 / MTok、出力 $10 / MTok;以後 $3 / $15 |
| Claude Haiku 4.5 | claude-haiku-4-5 |
最速・最安、軽量高スループットタスク向け | 200k tokens | 64k tokens | 最速 | 入力 $1 / MTok、出力 $5 / MTok |
| Claude Mythos 5 | claude-mythos-5 |
Fable 5 と同じ仕様・価格だが限定提供 | 1M tokens | 128k tokens | 遅め | 入力 $10 / MTok、出力 $50 / MTok |
MTok は million tokens、つまり 100 万 token を意味する。実際の価格は prompt caching、batch、データレジデンシー、クラウド地域などにも影響されるため、表には基本的な入出力価格だけを載せている。
Fable 5:最高能力だがデフォルトではない
Claude Fable 5 は、Anthropic が広く公開しているモデルの中で最も能力が高い。公式の位置づけは next-generation intelligence for long-running agents、つまり長時間 Agent 向けの次世代高能力モデルだ。
向いている用途は次の通り。
- 長時間・複数ステップで自律的に進む Agent ワークフロー。
- 複雑な研究、コード移行、システム横断の計画。
- 最高の推論能力と大きなコンテキストが必要な企業タスク。
- コストやレイテンシより価値が大きい高重要タスク。
ただし Fable 5 はデフォルトに向くとは限らない。最も高価で、遅延も大きい。最高能力が本当に必要でなければ、Sonnet 5 や Opus 4.8 から始める方が堅実だ。
もう一点、Fable 5 は adaptive thinking を使い、しかも always on だ。いつ、どれだけ推論するかを自動で決める。複雑なタスクには役立つが、コストと応答時間がタスクに依存しやすくなる。
Opus 4.8:複雑なコーディングと企業 Agent の堅実な選択
Claude Opus 4.8 は Fable 5 と Sonnet 5 の間に位置する。Anthropic は、複雑な Agent コーディングや企業作業でモデル選びに迷うなら Opus 4.8 から始めることを勧めている。
強みは次の通り。
- 1M token コンテキスト。
- 128k token 最大出力。
- 複雑なコーディング、ブラウザ Agent、コンピュータ利用、企業ワークフローに強い。
- 価格は Fable 5 の半分。
- adaptive thinking に対応。
Opus 4.8 は「高難度タスクのデフォルト」に向く。コードベース単位のリファクタリング、複雑な PR 修正、企業データ分析、複数ツール Agent、長文書推論などは、まず Opus 4.8 を基準にできる。
非常に難しいタスクで Opus 4.8 が足りなければ Fable 5 へ上げる。タスク量が多く、コスト圧力が強ければ Sonnet 5 へ下げる。
Sonnet 5:日常デフォルトに最も向く
Claude Sonnet 5 は、現在最も注目すべきデフォルト候補だ。位置づけは best combination of speed and intelligence、つまり速度と知能のバランスである。
向いている用途は次の通り。
- 日常的なコーディングとコードレビュー。
- ドキュメント整理、研究補助、知識作業。
- 中程度の複雑さの Agent。
- 企業内の自動化ワークフロー。
- コストを抑えつつ品質を大きく落とせない API アプリケーション。
Sonnet 5 の大きな変化は、これまで Opus に近かった多くの Agent 能力が Sonnet の価格帯に降りてきたことだ。同じく 1M token コンテキストと 128k token 最大出力に対応し、レイテンシは Opus より低い。
価格は 2026 年 8 月 31 日まで導入割引があり、入力 $2 / MTok、出力 $10 / MTok。2026 年 9 月 1 日以降は標準価格の入力 $3 / MTok、出力 $15 / MTok に戻る。標準価格でも Opus 4.8 より明らかに安い。
多くのチームの出発点としては、Sonnet 5 を第一候補にするのがよい。70〜80% のタスクをまず Sonnet 5 で覆い、本当に難しいタスクを Opus 4.8 や Fable 5 に上げる。
Haiku 4.5:高スループット、低遅延、低コスト
Claude Haiku 4.5 は現在の Claude 主力ラインで最速のモデルだ。公式には fastest model with near-frontier intelligence と位置づけられている。
向いている用途は次の通り。
- 分類、抽出、要約、形式変換。
- 短文のバッチ処理。
- カスタマーサポート、チケット、モデレーションなど高スループット用途。
- 低レイテンシが重要な対話型製品。
- 1M コンテキストを必要としない軽量タスク。
制限も明確だ。コンテキストは 200k tokens、最大出力は 64k tokens で、Fable、Opus、Sonnet の 1M / 128k より小さい。長いコードベース、複雑な複数文書分析、長時間 Agent には第一候補ではない。
しかし「大量・簡単・速さ重視」のタスクなら、Haiku 4.5 の費用対効果は非常にわかりやすい。入力 $1 / MTok、出力 $5 / MTok だ。
Mythos 5:通常の選択肢ではない
Claude Mythos 5 は Fable 5 と同じ仕様・価格だが、一般提供モデルではない。Anthropic の文書では limited availability とされ、Project Glasswing の承認済み顧客向けだ。
つまり通常の API 選定では、Mythos 5 を候補に入れる必要はほとんどない。すでに承認済みであるか、Anthropic、AWS、Google Cloud などのアカウントチームを通じてアクセスを得ていない限り、Fable 5 の直接代替にはならない。
選び方:タスク複雑度で分ける
順序は次のように考えるとよい。
-
デフォルトは Sonnet 5 から
多くのコーディング、ドキュメント、Agent、企業自動化に向く。 -
明らかに複雑なら Opus 4.8 へ
長いコードベース、複数ツール、複数ステップ、安定実行と強い推論が必要な場面。 -
最高能力が必要なら Fable 5
高価値、長時間、失敗コストが高く、価格感度が低いタスク。 -
高スループット軽量タスクは Haiku 4.5
分類、抽出、要約、サポート、バッチ処理、低遅延対話。 -
Mythos 5 はアクセスがある場合のみ
一般開発者のデフォルト選択肢ではない。
移行とコストの二つの注意点
第一に、新しい Claude モデルは新 tokenizer を使う。Anthropic の文書では、Opus 4.7 以降の Opus、Fable 5、Mythos 5、Mythos Preview、Sonnet 5 では同じテキストがおよそ 30% 多い token になる可能性がある。コスト見積もりでは 100 万 token あたり単価だけを見てはいけない。
第二に、1M コンテキストがあるからといって毎回埋めるべきではない。Fable 5、Opus 4.8、Sonnet 5 は 1M token に対応するが、ツール呼び出し、キャッシュ、出力、多ターン Agent がコストを重ねる。実運用では次の方がよい。
- よく使うシステムプロンプトと長い背景には prompt caching を使う。
- 長文書は先に分割抽出し、高能力モデルに総合判断をさせる。
- 簡単なステップは Haiku や Sonnet に任せ、重要判断を Opus / Fable に上げる。
- 公式 benchmark だけでなく、実タスクの小さなサンプルで試す。
簡単な結論
現在の Claude ラインはかなり明確だ。
- Fable 5:最高能力。最も難しく価値の高いタスク向け。
- Opus 4.8:複雑な Agent コーディングと企業タスクの強力な選択肢。
- Sonnet 5:日常デフォルトに最適。能力、速度、価格のバランスがよい。
- Haiku 4.5:最速・最安。大規模な軽量タスク向け。
- Mythos 5:限定提供。通常の選択肢ではない。
製品や社内ワークフローで Claude モデルを選ぶなら、最高階層を追うのではなくタスクを分けるのが実用的だ。Haiku は軽量バッチ、Sonnet 5 はデフォルト実行層、Opus 4.8 は複雑な Agent と高難度コーディング、Fable 5 は最も難しく高価値な一部のタスクに残す。
モデルルーティングの提案
Claude モデル選定では、「ひとつのデフォルトモデル」だけにしない方がよい。軽量バッチは Haiku、日常コーディングと知識作業は Sonnet、複雑なリポジトリタスクと複数ステップ Agent は Opus、最高価値・最高難度のタスクは Fable に上げる、というルーティングが実用的だ。
ルールは最初は単純でよい。要約、分類、フィールド抽出は Haiku。PR review、文書生成、普通のコード修正は Sonnet。モジュール横断リファクタリング、インシデント振り返り、複雑な計画は Opus。Opus が連続して失敗するか、タスク価値が高い場合は Fable に渡す。
各階層には終了条件も必要だ。出力が不確実、ツール呼び出し失敗、テストが連続で通らない、コンテキストが閾値を超える、権限や本番データに関わる場合は、自動継続ではなく人間の確認を挟むべきだ。
コスト評価方法
モデル価格表は概算にすぎない。実コストはコンテキスト長、キャッシュヒット率、再試行回数、出力長、人間の手戻り時間で決まる。高価なモデルが一回で完了するなら、安いモデルを何度も再試行するより安い場合がある。
タスク種別ごとに、平均 token コスト、平均人間レビュー時間、失敗後に上位モデルへ上げる割合を記録するとよい。二週間ほど回すと、どのタスクを Sonnet に置き、どれを Opus や Fable に上げるべきか見えてくる。
参考資料: