Codex と Claude Code のタスク引き継ぎでよくある誤解は、「二つの AI が同時にコードを書く」ものだと考えることです。安定した使い方はむしろ逆で、同じフェーズでは一つのツールだけが書き、もう一つはレビュー、振り返り、コンテキスト補完、または次の段階への引き継ぎを担当します。
Claude Code と Codex が同じファイル群を同時に編集すると、短期的には速く見えます。しかし後から、誰が何を変えたのか、どの変更がテスト失敗を生んだのか、どちらかが相手の設計を上書きしたのかが分かりにくくなります。引き継ぎの目的は並列でコードを書くことではなく、複雑なタスクを段階に分け、それぞれのツールを得意な場所で使うことです。
Quick Answer
まずは次の分担から始めるのが安全です。
| フェーズ | 主担当 | もう一方の役割 |
|---|---|---|
| 要件分解 | Claude Code または Codex | 第二の視点を出す |
| ローカル実装 | Claude Code | 書かずにレビュー待ち |
| 独立レビュー | Codex review | Claude Code は変更を止める |
| findings 修正 | Claude Code | Codex は再レビューのみ |
| 長時間タスク復旧 | Codex または Claude Code | 引き継ぎパケットから続行 |
| PR 前チェック | Codex | Claude Code が最終修正 |
基本ルールは三つです。
- 同時にコードを書く Agent は一つだけにする。
- 引き継ぎ前に必ず「引き継ぎパケット」を作る。
- 受け取る側はすぐ編集せず、まず状態を確認する。
引き継ぎが必要な場面
すべてのタスクで二つのツールを使う必要はありません。引き継ぎが有効なのは次のような場面です。
- Claude Code が実装を終え、Codex に独立レビューさせたい;
- Codex が計画や findings を出し、Claude Code が修正する;
- 長時間タスクが途中で止まり、別の Agent が checkpoint から続ける;
- ローカル環境とクラウド環境で役割を分けたい;
- 一方が会話コンテキストを持ち、もう一方が PR 前レビューに向いている;
- 一つの Agent の自己完結を避け、第二の視点で設計を確認したい。
一行の設定変更や小さなテスト追加なら、引き継ぎは不要です。引き継ぎには、状態、境界、次の一手を書くコストがあります。
二つの Agent に同じファイルを書かせない
これは最重要の安全ルールです。
非推奨:
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推奨:
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これなら責任範囲が明確です。問題が起きたとき、どのフェーズで入った変更か追跡できます。
引き継ぎパケットに含めるもの
Claude Code から Codex、または Codex から Claude Code へ渡すたびに、短いパケットを作ります。
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これは見栄えのよい要約ではなく、次の Agent が現場を復元するための記録です。ファイル、検証、境界を必ず含めます。
この考え方は AI Agent の長時間タスクが中断したときの再開方法 と相性がよいです。引き継ぎは、意図的な復旧の一種です。
Claude Code から Codex:実装後レビュー
最もよく使う安定パターンです。
- Claude Code が機能を実装する。
- Claude Code が最小限の関連テストを実行する。
- Claude Code が引き継ぎパケットを出す。
- Codex が diff を読み、読み取り専用でレビューする。
- Claude Code が findings を修正する。
- Codex が再レビューする。
Claude Code へのプロンプト:
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Codex へのプロンプト:
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Codex CLI の公式ドキュメントでも review は独立した能力として扱われます。未コミット変更、特定 commit、base branch との差分をレビューし、優先度付き findings を返せます。この段階は読み取り専用に保つのが安全です。
Codex から Claude Code:findings の修正
Codex が findings を出したあと、レビュー役にそのまま修正させる必要はありません。Claude Code が実装コンテキストを持っているなら、findings を小さく処理させるほうが安定します。
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これにより、レビュー指摘をきっかけにモジュール全体が書き直される事故を避けられます。
計画だけを Codex に任せる
Codex が先にコードベースを読み、影響範囲や計画を整理し、Claude Code が実装する流れも有効です。
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その後、Claude Code には第 1 フェーズだけ渡します。
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引き継ぎでは「一気に全部やる」ことを避け、フェーズごとに進めます。
長時間タスクの転送
Claude Code の会話に大量の文脈がたまった場合は、全ログをコピーするのではなく状態を圧縮します。
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Codex 側では次のように始めます。
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「Claude Code の続きやって」より、はるかに安定します。
codex-plugin-cc のような橋渡しツールを使う場合は、codex-plugin-cc:Codex を Claude Code ワークフローに接続する も参考になります。プラグインがなくても、手動の引き継ぎパケットで多くのタスクは十分回ります。
resume の注意点
Codex CLI には codex resume があり、Claude Code にも --resume、--continue や会話復元があります。ただし resume は万能ではありません。
復元前に確認します。
- この会話は現在のリポジトリのものか。
- ワークスペース状態と会話の記憶は一致しているか。
- 前回すでに副作用のあるコマンドを実行していないか。
復元後の最初のプロンプト:
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古い計画を現在のファイル状態へ誤適用するのを防げます。
Git を境界線にする
Git は最も分かりやすい引き継ぎ境界です。
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フェーズが完了したら、小さな commit にしてもよいです。
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commit しない場合は patch として保存できます。
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乱れたワークスペースで引き継がないでください。ユーザーの既存変更、Claude Code の変更、Codex の変更、次の Agent が触ってはいけないファイルを分けます。
Hooks と Skills で習慣化する
頻繁に引き継ぐなら、「終了前に引き継ぎパケットを出す」ことを Claude Code hook やプロジェクトルールに書きます。
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Codex 側では同じ手順を skill にできます。Codex Skills で独自ワークフローを書く を参考に、読み取り専用レビュー、引き継ぎ解析、長時間タスク復旧を固定手順に分けます。
ローカル、IDE、クラウドの分担
すべてを一つの画面に押し込む必要はありません。
| 場面 | 向いている入口 |
|---|---|
| 現在ファイルの小さな修正 | IDE の Claude Code または Codex |
| ターミナルでのバグ再現 | Claude Code または Codex CLI |
| 未コミット diff のレビュー | Codex review |
| 長時間探索 | Codex cloud または独立セッション |
| プロジェクトルール | AGENTS.md、Claude project rules、skill |
| 強制チェック | Hooks |
重要なのは、どちらがどちらを置き換えるかではなく、コンテキストと責任境界を明確にすることです。
完整な引き継ぎ例
タスク:ユーザーインポートをリファクタし、テストを追加する。
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Codex で読み取り専用レビュー:
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Claude Code で findings を修正:
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最後に Codex が再レビューし、人間が commit、merge、release を判断します。
よくある失敗
二つの Agent が互いのコードを編集する
単一書き手ルールを使います。一つが書き、一つがレビューします。
引き継ぎパケットが長すぎる
引き継ぎパケットはチャット履歴ではありません。短く、構造化され、実行可能であるべきです。
検証情報がない
「完了しました」だけでは不十分です。何を実行し、何を実行していないか、何が失敗したかを書きます。
レビュー役にそのまま修正させる
レビューと修正は分けるほうが安全です。
古いコンテキストを無視する
resume 後は、編集前に現在のワークスペースと状態を合わせます。
最初から完全自動化しようとする
まずは引き継ぎパケット、読み取り専用レビュー、findings 単位の修正を安定させます。その後で hooks や skills を加えます。
引き継ぎチェックリスト
| チェック項目 | 確認 |
|---|---|
| 元の目的は明確か | |
| 現在フェーズは明確か | |
| 変更ファイルは列挙されているか | |
| ユーザーの既存変更と区別できるか | |
| 検証結果は書かれているか | |
| 未完了項目はあるか | |
| 繰り返してはいけない操作はあるか | |
| 受け手は最初に読み取り専用で確認するか | |
| 同時に書く Agent は一つだけか | |
| 次の一手は十分小さいか |
この表を埋められないなら、まだ引き継ぐべきではありません。
参考資料
- OpenAI Developers: Codex CLI features: https://developers.openai.com/codex/cli/features
- OpenAI Developers: Codex workflows: https://developers.openai.com/codex/workflows
- OpenAI Developers: Codex IDE extension features: https://developers.openai.com/codex/ide/features
- Anthropic Docs: Claude Code common workflows: https://docs.anthropic.com/en/docs/claude-code/common-workflows
- Anthropic Docs: Claude Code hooks guide: https://docs.anthropic.com/en/docs/claude-code/hooks-guide
まとめ
Codex と Claude Code の引き継ぎで重要なのは、二つの Agent を同時に働かせることではなく、段階的に協力させることです。
Claude Code は実装、修正、ローカルでの継続作業に向いています。Codex は独立レビュー、計画の再確認、PR 前チェック、長時間タスクの継続に向いています。毎回、目的、変更ファイル、検証、リスク、次の一手を含む構造化された引き継ぎパケットを使い、Git、resume、review、hooks、skills、checkpoint で境界を作ります。
「一つが書き、一つがレビューし、受け手はまず状態を確認する」を固定すれば、二つの AI が混乱して同時作業する状態から、制御されたエンジニアリングフローへ変えられます。