Joplin は、Windows、macOS、Linux、Android、iOS に対応したオープンソースのノートおよび ToDo アプリです。単なる軽量メモではなく、大量のノートを長期保存し、複数デバイスへ同期しながら、できるだけデータをユーザー自身の手元に置くための知識管理ツールです。
Joplin のノートは Markdown 形式で、ノートブック、タグ、全文検索、添付ファイル、ToDo、プラグイン、テーマ、ブラウザ用 Web Clipper をサポートしています。Evernote から移行したい人や、よりオープンな形式で個人資料を管理したい人にとって、よく選ばれる選択肢です。
Joplin が解決すること
多くのノートアプリは便利ですが、データが特定のアカウント、クラウドサービス、あるいは独自形式に閉じ込められやすいという問題があります。Joplin はよりオープンな考え方を採り、完全なデータをローカルに保持し、本文は Markdown で保存し、ユーザーが選んだ同期先を通じて複数デバイス間で同期します。
次のような用途に向いています。
- ノートを Markdown として長期保存したい。
- パソコンとスマートフォンの間でノートを同期したい。
- Evernote から古いノートや添付ファイルを取り込みたい。
- エンドツーエンド暗号化同期を使いたい。
- プラグインやテーマでノートアプリを拡張したい。
- Web ページの内容を素早く自分のノートライブラリへ保存したい。
主な機能
| 機能 | 説明 |
|---|---|
| オープンソース | リポジトリが公開され、長期的にメンテナンスされており、AGPL-3.0 license で提供 |
| クロスプラットフォーム | Windows、macOS、Linux、Android、iOS に対応 |
| Markdown | ノート本文は Markdown を使用し、閲覧、移行、長期保存がしやすい |
| オフラインファースト | データは常にローカルに保存され、ネットワークがなくても閲覧・編集できる |
| 同期 | Joplin Cloud、Nextcloud、Dropbox、OneDrive など複数の同期先に対応 |
| エンドツーエンド暗号化 | 同期時に E2EE を有効化でき、クラウド保存時のリスクを下げられる |
| インポート | Evernote からのインポートと通常の Markdown ファイルのインポートに対応 |
| 拡張 | プラグイン、テーマ、Web Clipper に対応 |
オフラインファーストとは
Joplin の公式 README では “offline first” が強調されています。これは、ノートがクラウドだけに存在するのではなく、ローカルのパソコンやスマートフォンに保存されるという意味です。ネットワークがなくても、既存のノートを開き、検索し、編集できます。
この設計はノートツールにとって重要です。ネットワークが不安定なとき、同期サービスが一時的に使えないとき、あるいはアカウントサービスに問題が起きたときでも、ローカルには完全なデータが残ります。同期は複数デバイスの状態を揃えるためのものであり、利用体験全体をクラウドに依存させるものではありません。
Markdown とインポート機能
Joplin はノートに Markdown を使うため、完全な独自形式よりも移行やバックアップがしやすくなります。通常の Markdown ファイルを直接インポートできるほか、Evernote からノートを取り込むこともできます。
Evernote からインポートする際、Joplin は書式付きコンテンツを変換し、画像や添付ファイルなどのリソースを保持しようとします。作成日時、更新日時、位置情報などのメタデータも可能な範囲で保持します。長年 Evernote に資料をためてきた人にとって、これは単に文字をコピーするより重要です。
ただし、アプリ間の移行で「ワンクリックで完全」と考えるのは危険です。複雑なレイアウト、表、添付ファイル、内部リンク、タグ構造は、少量のサンプルで確認してから全体を移行するのがおすすめです。
同期と暗号化
Joplin は複数の同期方式をサポートしています。代表的な選択肢は次の通りです。
| 同期先 | 向いている場面 |
|---|---|
| Joplin Cloud | 公式サービスで手軽に使いたい |
| Nextcloud | 自前のクラウドやチーム環境がすでにある |
| Dropbox | Dropbox を普段から使っている |
| OneDrive | Microsoft エコシステムを利用している |
| ファイルシステム / WebDAV など | 同期場所を自分で管理したい |
同期はエンドツーエンド暗号化と組み合わせて使えます。有効化すると、ノート内容はクラウドへ同期される前に暗号化され、クラウドサービス側には主に暗号化済みデータが保存されます。これにより、第三者のクラウドストレージや同期サービスから内容が漏れるリスクを下げられます。
一方で、暗号化には管理コストもあります。パスワードや復旧情報を適切に保管しなければ、デバイスの変更や再インストール後に古いノートを復号できなくなる可能性があります。
Web Clipper とプラグイン
Joplin には、Chrome や Firefox などのブラウザから Web ページやスクリーンショットを保存するための Web Clipper も用意されています。資料収集、Web クリップ、研究ノート作成を行う人にとって実用的な入口です。
プラグインとテーマにより、Joplin は固定機能のノートソフトというより、拡張可能なプラットフォームに近くなっています。ユーザーは自分のワークフローに合わせて、編集、表示、検索、インポート、エクスポートなどの機能を拡張できます。
Obsidian との違い
Joplin と Obsidian は Markdown ユーザーの間でよく比較されますが、重視している部分は異なります。
| 観点 | Joplin | Obsidian |
|---|---|---|
| 主な位置づけ | 同期と暗号化を内蔵したオープンソースのノート・ToDo アプリ | バックリンク、プラグイン、グラフを重視するローカル Markdown 知識ベース |
| データ整理 | アプリがノートブック、タグ、添付ファイル、データベースインデックスを管理 | フォルダと Markdown ファイルを中心に作業 |
| 同期 | 複数の同期先と E2EE を内蔵 | 公式同期は有料。第三者同期を自分で使うことも可能 |
| 向いている人 | すぐ使えて、クロスデバイス同期とプライバシーもほしい人 | ローカルファイル中心の知識ワークフローを深くカスタマイズしたい人 |
「オープンソース版 Evernote + Markdown + 暗号化同期」が欲しいなら、Joplin のほうが近いです。ローカル Markdown ファイルを中心に高度にカスタマイズした知識システムを作りたいなら、Obsidian のほうがなじみやすいかもしれません。
向いている人
Joplin は次のようなユーザーに向いています。
- Evernote から移行したい人。
- ノートを Markdown として保存したい人。
- Windows、macOS、Linux、Android、iOS 間で同期したい人。
- プライバシーを重視し、エンドツーエンド暗号化を使いたい人。
- オープンソースで、セルフホスト可能で、長期的に移行しやすいノートアプリを望む人。
- Web クリップと添付ファイル管理が必要な人。
ただし、極限までシンプルなメモだけが欲しい人には必ずしも向きません。Joplin は機能が多く、同期、暗号化、プラグイン、インポートを設定するには少し理解が必要です。
使い始めるときのすすめ
Joplin を試すなら、次の順番で始めると安全です。
- まずデスクトップ版でテスト用ノートブックを作る。
- 少量の Markdown または Evernote サンプルをインポートする。
- 画像、添付ファイル、タグ、作成日時、書式が正常か確認する。
- 次に Joplin Cloud、Nextcloud、Dropbox、OneDrive などの同期先を設定する。
- エンドツーエンド暗号化を有効にする場合は、すべてのデバイスで正常に同期・復号できることを確認する。
- 最後に完全なノートライブラリを移行する。
この手順なら、何年分ものノートを一度に取り込むより安定し、正式な移行前に書式や同期の問題を見つけやすくなります。
私の見方
Joplin の強みは、Markdown、オープンソース、クロスプラットフォーム、オフラインファースト、同期、エンドツーエンド暗号化という重要な方向性をまとめている点です。単なる Markdown エディタではなく、長期利用を前提にした個人ノートシステムに近い存在です。
ノートデータをできるだけオープンに保ちたい一方で、同期、暗号化、モバイルアプリをすべて自分で組み合わせるのは避けたいなら、Joplin は試す価値があります。特に Evernote から移行したい人、プライバシーを重視する人、複数デバイスで使う人、将来もデータを移動できる状態にしたい人に向いています。
プロジェクトリンク:laurent22/joplin
公式ドキュメント:Joplin documentation